シロカン

ザッパーザクの口からゆっくり吐き出された濛々と白けぶる煙は、湿気の多い空気へと混ざり、消えた。

外は雨。
今は冬と春の入り混じった微妙な季節でもあるが、今日も生憎冷たい方の雨らしい。
ここのところ連日降り続く雨は下手をすればみぞれ混じりで、冷え込んだ気温のせいでこのところめっきり影を潜めていた暖房も久しぶりにフル稼働だ。
ふと視線を移した暗い灰色をした空が見える窓は、外から打ち付ける雨と内部の結露で尚更濡れてしまっている。
特にやることもなく安穏と過ごすひと時の中で、先ほどから傍らでドムが何やら懸命に武器弄りに勤しんでいる。性格はアレだが、意外と手先は器用だ。
かくいう俺は先程からソファに深く座り込んで、新聞紙を片手に煙草を吹かしていたりする。

と、自動ドアが開き、グフが入ってきた。
俺達を一瞥するとあからさまに嫌そうな、呆れたような視線を向ける。

「……お前ら……今は仕事無いからとやかく言わないけど、ちょっとは外行けよ…」
「だって雨降ってるドム～」
「人が少なくて良いと思えば良いじゃねえか…」
「気分じゃないしぃ～」
「そうそう。馬鹿だなグフ、こういう日は何もしねーで室内でゆっくり過ごすのがアタリなンだよ」
「ほう、アタリな。俺には何時もとさして変わらないように見えるが…」
「気のせい気のせい。まぁお前もコーヒー容れてやるからそこ座れよ」

かくいうグフもする事など無いのだろう。そう言ってちょいちょいと手招きをしてソファを指差すと、グフは溜息をついて近付いてきた。
まぁ気分取りは好きじゃないが、今更どこかに行けと急かされるのも面倒な話だ。
最悪、何処かからあらぬ仕事なんかを発掘された日にはそれこそたまったもんじゃない。
グフの場合、雰囲気に流されるきらいがあるので一旦丸め込んでしまえばこの状況を継続出来るだろう。

「しかし野郎が一室に集まって何やってんだか…」
「充電してンだよ。あとは電気代削減のため、とかか？」
「アホくさ……使ってもいねぇのに何の充電だ、何の」
「昨日のおしおきの傷と体力の充電ドム？」
「おいやめろ」

寝転がってて、本を読んで、コーヒー飲んで、武器弄って。

何もしない事が苦になる人間がたまにいる。
だが、延々と動き続けられるほどヒトの身体ってのは上手く出来てはいない。
その状況が飽きるまでは、暫しの充電を。

「ゆっくり、ゆっくり。たまにゃーこう言うのも悪かねェだろ」
「たまに、なぁ…？」
「そ。たまーに、ドム…」


冷たい雨の一日。

安っぽいインスタントのコーヒーの匂いと、煙草の臭いと、武器の油と。
それと、怠惰な空気が流れていった。
 


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結局は仲の良いウチの三馬鹿さん。

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